EX-SDIについてです。
■EX-SDIとは
最近防犯カメラ業界は、いくつかの新規格が登場しています。新規格はAHD・CVI・TVI・EX-SDIという規格です。これらの新規格はHD-SDIが5C-FBで100mごとにリピーターが必要な事、非圧縮のためDVRの映像処理に負担が掛かるという問題点をクリアするため、チップメーカーが開発しました。
EX-SDI(Extended Srial Digital Interface)はEYENIXという韓国のチップメーカーが開発した圧縮転送技術です。EX-SDIは VLCコーディックを使用し、PRNR値が40bBという圧縮による視覚的には損失がわからないというレベルの圧縮映像を実現しています。圧縮にかかる速度も0.0002秒(0.2ms)と極めて短く圧縮による遅延とは言えないレベルです。またEX-SDIは3G-SDI、HD-SDIと下位互換性を持ち、4KUHDにも対応していいます。HD-SDI以上の画質を伝送できる技術ですので将来的にも普及が期待されています。
EX-SDIが他の新規格と大きな違いはAHDやCTI、TVIがアナログ伝送であるのに対し、EX-SDIの伝送はデジタルです。そのためアナログ伝送の新規格と比較すると若干高め、伝送距離が短いというデメリットがありますが、HD-SDIと比較するとローコスト、長距離です。画質はHD-SDIと比較し視覚上遜色がない、1本のケーブルで電源と映像の重畳(ちょうじょう)できるというメリットがあります。
EX-SDIは韓国ではロングリーチと呼ばれ、HD-SDIを長距離伝送するための規格というイメージがあります。それは先述の通り新旧の映像規格が7種ある中でHD-SDIとEX-SDIだけが高画質画像を劣化することなくデジタル伝送する事に所以します。実際、EX-SDIのカメラやDVRがリリースされる前はリピーターとドングルと呼ばれるパーツを使ってHD-SDIをEX-SDIで伝送し、DVRに入力する直前にEX-SDIからHD-SDIに戻すというHD-SDIの接続距離を延長するために使用されていました。
■採用メーカー
韓国系が主です。AHDは台湾と韓国のローコストがメインのメーカーが主流、CVIは中国のDahua社、TVIはHIKVISION社で生産されています。生産しているカメラメーカーが複数あるという点ではAHD、EX-SDIは共通しています。EX-SDIは韓国のカメラメーカーでもコストより品質重視のメーカーで採用されている傾向があります。メーカーとしてはWONWOO,Qtum,WEBGATE,Mintron,TBTなどがあります。
日本国内でも警備機器メーカー大手や海外系防犯カメラ業界の中でシェアをもつ輸入代理店複数社なども採用しています。
■伝送のおける特徴
EX-SDIはデジタル伝送なのでノイズ耐性があります。図のような高圧線、エレベーター、建築物からのノイズに対しアナログは波形がゆがみ映像に悪影響を及ぼすというノイズが発生しますが、EX-SDIはデジタル信号なので電波のゆがみに強いという特性があります。また、アナログが距離が長くなればなるほど減衰が発生しますが、デジタルであるEX-SDIは減衰しません。電源重畳にも対応しています。
■メリット
・画質
メリットはHD-SDIに視覚的に遜色ない画質です。他の新規格は同じ画素数でも1画素あたりの情報量やデジタルからアナログ、アナログからデジタルと変換することやアナログ伝送により減衰や劣化が発生しますが、EX-SDIはRAW(生)データからEX-SDIに変換も伝送もデジタルで行われるため減衰や劣化は発生しません。
・伝送距離
伝送距離はHD-SDIが5C-FBで100mなのに対し300m~500m、3G-SDIも最大450m伝送可能です(5C-FB)。3C-2Vも使用可能です。
・互換性
EX-SDIのカメラはEX-SDIの他に切り替えでHD-SDIを出力できます。EX-SDIエンコードチップを持つDVRはEX-SDI、HD-SDI(機種によってはアナログ960H)が入力可能です。またチャンネルごとの制限もありませんのでHD-SDIで十分な伝送率が確保できるカメラはHD-SDIで設定し、伝送率が低いカメラのみ施工時にEX-SDIに切り替えて現場を収めるということが可能です。
■デメリット
・コスト
デメリットは比較対象によって異なりますが、アナログ伝送方式の新規格と比較するとコストと伝送距離です。もちろんHD-SDIと比較するとローコストで導入可能ですがAHDやCVIと比較すると若干高くなる傾向があります。
■将来性
これはEX-SDIだけではなく新規格の全てに言えることですが、アナログとHD-SDIを入れると7種の映像規格(IPカメラの出力は映像とは言えないため含めていません。同軸伝送のみで7種です)が現在の防犯カメラ業界に存在します。誰もが予想できる事ですが全ての規格が10年後、対等に共存していると言う事はないでしょう。ここからは私見ですが、アナログだけを出力するカメラやHD-SDIだけを出力するカメラはそう遠くない将来 なくなるでしょう。アナログという規格やHD-SDI,3G-SDIという規格は元々防犯カメラの映像規格ではなく、放送業界では一般的な映像規格です。アナログは60年以上、HD-SDIは10年以上の歴史があります。映像規格としては特段新しい規格ではありませんし、他業界では一般的に使われている規格なので防犯カメラ業界でも消滅するというのは考えられません。新規格は殆どが既存規格と新規格を出力できるカメラです。DVRも複数の規格を受信できるようになっています。では新規格と既存規格の組み合わせはどうでしょう。チップメーカーのウェブサイトを見ているとコンパチビリティという言葉が出てきます。これは互換性と訳す事もできますが、日本語でいう互換性とはニュアンスが異なり、OSDメニューで切り替えすることで出力可能な映像のことを指しています。EX-SDIのコンパチビリティはHD-SDI、AHDのコンパチビリティはアナログ960H。これはEX-SDIはメニュー画面でEX-SDIとHD-SDIを切り替えることができ、AHDはAHDとアナログの960H画質と切り替えが可能と言う事です。新規格の中で4Kにもデジタル伝送にも対応するのはEX-SDIのみですからHD-SDIとコンパチビリティがある映像規格で将来的にも有力なのはEX-SDIだと考えています。
マーケットニーズで考えた場合も東京オリンピックでは4K対応の防犯カメラが必要といわれています。もちろん2020年には4Kクラスの防犯カメラしか流通していないと言う事ではなく、画像から顔認識ができる映像の必要条件が4Kクラス、遅延がないカメラが必要になるだろうといわれています。またマシンビジョンでも従来はNTSC規格のハイスピードカメラを使用していましたが高画質化にあわせて3G-SDIへのニーズが高まっています。
文責:和田耕二
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