AHD

AHDについてです。

■ AHDとは

最近防犯カメラ業界は、いくつかの新規格が登場しています。新規格はAHD・CVI・TVI・EX-SDIという規格です。これらの新規格はHD-SDIが5C-FBで100mごとにリピーターが必要な事、非圧縮のためDVRの映像処理に負担が掛かるという問題点をクリアするため、チップメーカーが開発しました。

AHDは韓国のNEXTCHIPという会社が開発し、韓国、台湾のカメラメーカーが採用しています。リリース時期が他の規格より早かったことと、チップコストが安いため日本でも普及率が高いようです。AHDはAnalog High Definitionの略であることから、アナログカメラの発展系とかアナログカメラがメガピクセルに対応するようになったと表現している会社もあるようですが、従来のアナログカメラとはまったく異なるものです。

AHDはHD規格の映像データをアナログに変換してHD画質の映像を伝送します。ちょっと解りにくいですが、通常アナログカメラはCVBSと総称されるNTSC信号やPAL信号の映像のことを指します。これは地上アナログ波放送の頃のテレビやRCA(赤白黄のピンコネクタ)接続できる機器の映像のことです。AHDはアナログである事は間違いありませんがケーブルをそのままテレビのRCA端子に接続しても映像は出ません。AHDがアナログで映像を伝送していますが、映像方式がアナログ方式(NTSC方式)ではないからです。AHDの伝送方式はデジタル映像をデータ変換しアナログで伝送しているので、HD映像(デジタル)をアナログの電波に変換してDVRまで送り、HD映像(デジタル)に戻しているといえます。
 アナログ映像方式のカメラも水平解像度を増やす事で高画質化が進んでいます。これはNTSC方式に準拠し、縦の解像度が480iのままで横を広く取る事で高い解像度を持っています。AHDはHD規格なのでNTSCと同一区分に分類される事はありませんし、高画質のアナログはNTSCなのでHD規格と呼ばれる事はありません。

アナログ映像のカメラ(NTSC):垂直解像度が480i
アナログで伝送しているHDカメラ(AHD):垂直解像度が720p or 1080p

 

■ AHDの特性

AHDのチップを採用している会社は台湾、韓国のローコストをセールスポイントにしているカメラ製造メーカーに多い傾向があります。新規格が中国系ではTVIとCVI、韓国系ではAHDとEX-SDIに分類され、韓国系でもコスト重視がAHD、画質重視がEX-SDIに分かれます。特にAHDはコスト面で優位性があり、リリースも早かったためコスト重視のカメラメーカーや早い物好きのカメラーメーカーが採用しました。

 

■ メリット

・コスト
アナログカメラとあまり変わらないコストで導入できます。(アナログも安くなっているので価格差はあります)今までとあまり変わらないコストでメガピクセルを導入できるのは大きなメリットといえます。

・ケーブル
アナログで伝送していますのでHD画質にもかかわらず最大500m(3C-2Vの場合は300m)配線できます。3C-2Vでも配線可能なのでアナログカメラからリプレイス(入れ替え)しやすい、リスクが少ないというメリットがあります。

 

■ デメリット

・画質
AHDはHD画質を出力しますがコストと伝送距離にウエイトを置いているため、同じ解像度でもHD-SDIやEX-SDIに比較すると画質は劣ります。これは同じ解像度でも1画素あたりの情報量がHD-SDIや他規格比較すると小さいということと、AHDはHD映像をアナログで伝送する、つまりAHDチップでエンコードとデコードを行うため画質が劣化するということが原因です。

・バージョン
ADHにはバージョン1.0(720p)とバージョン2.0(1080p)がありますが互換性に問題があります。カメラ製造メーカーにとってはチップのソケット形状が異なるため1.0のカメラに2.0のチップをそのまま乗せかえることが出来ません。つまりカメラ製造メーカーにとっては1.0と2.0のカメラを同じラインで製造が出来ないため生産コストと在庫の負担が大きくなってしまいます。販売会社や利用者にとってはAHD1.0でシステム導入後にメーカーの主力ラインナップがAHD2.0になった場合、既存のDVRに接続できないということが想定されます。

・互換性
AHDとアナログ映像の両方を出力するカメラもDVRも存在します。というより、ほぼ全てのAHDカメラやDVRがアナログに対応しています。しかしAHDのデコードチップ(DVR側)が2ch用のため、1chと2chがペア、3chと4chがペアいうように2つのチャンネルが紐付けされるので、片方がAHDならもう片方もAHD、一方がアナログならもう一方もアナログというように入力チャンネルの映像規格が制限されます。AHDカメラでAHD画質を出力するためにはカメラ側でAHDに出力設定することと、連続する2つの入力をAHDにする必要があります。この特性を把握せずに施工したため、メガピクセルのカメラとして提案したのに全てアナログ映像に 設定されてしまうというケースもあるようです。

■ 将来性

これはAHDだけではなく新規格の全てに言えることですが、アナログとHD-SDIを入れると7種の映像規格(IPカメラの出力は映像とは言えないため含めていません。同軸伝送のみで7種です)が現在の防犯カメラ業界に存在します。誰もが予想できる事ですが全ての規格が10年後に共存存在していると言う事はないでしょう。ここからは私見ですが、アナログ映像のみを出力するカメラはなくなりAHDとアナログの高画質(960H)を切り替えできるカメラかCVIとアナログの高画質(960H)を切り替えできるカメラがローコストカメラの主力になっていくと思います。AHDのなかでも1.0と2.0どちらが主力となるかは今の所は様子をみるしかなさそうです。

アナログ映像は60年以上使われてきた映像規格なのでアナログが無くなると言う事は考えられません。他規格と切り替えもしくは同時に出力できる映像として残ると思います。ただ、現在アナログの最高画質は960Hが主流ですがもう少し横に伸びるかもしれません。

 

 

文責:和田耕二

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